白川・黒川その水環境の特徴と水質
東海大学工学部都市工学科
助教授 金子 好雄
 白川の特徴はまずその流域の形にあります。川の流域とは、簡単に言うならば、 降った雨が対象とする川に流れ込むすべての地域範囲のことです。 白川の流域面積の約80%は、世界最大級の陥没地形である阿蘇カルデラ内であり、 流域の形は阿蘇カルデラ部分を頭とする「おたまじゃくし」にたとえられます。 また、外輪山の西側部分の立野を流下した白川は、大津・熊本市方面に向かって西部の火山灰台地を流れ、 この間に流入する支川は鳥子川だけです。 つまり、白川の水質を形成しているところは、ほとんど阿蘇カルデラ内であるということです。

 熊本県内の主要河川は、北部から「菊池川」・「白川」・「緑川」・「球磨川」の4水系の河川です。 この中で特に「白川」は火山性地域の水質の特徴を強く持っています。

溶存イオン(水の中に溶けている電気を帯びた原子や原子団)としては、 硫酸イオン(SO42-)、 カルシウムイオン(Ca2+)の濃度が 特に高く、比較的高い濃度のフッ素イオン(F-)を含有しているのが特徴です。 これらのイオンは、これまでの調査の結果から特に黒川の内ノ牧温泉の少し下流の支川 「黒戸川」・「甲賀川」の水質の影響を強く受けていることが分かりました。 また、フッ素イオンの濃度は、今までの調査結果から白川・黒川合流後の立野より下流では、 水道の飲料水基準(0.8mg/L以下)をほぼ満足していますが、 第9回調査時はわずかですが飲料水基準値を超過する地点も見られました。 白川は現在水道水源に使われていませんが、 基準以上の高いフッ素イオン濃度を含む水を飲用等に使っていると、 特に14歳程度以下の成長期の青少年の歯に「斑状歯(はんじょうし)」と呼ばれる症状を呈することがあります。(阿蘇の色見地区では、飲料水を水道に変換する以前は「ヨナバ」といって、風土病となっていたとのことです。)



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